植物性料理研究家うのゆきこです。
管理栄養士さんが教えている食育講座などでは、「バランスよく食べよう」という解説が行われています。
肉も大切、野菜も大切、という立場です。ただし、
現代人は野菜不足になりがちなので、野菜を意識して多めに食べよう、ということになっています。
しかし、ベジタリアンやマクロビ系の講座では、「肉は百害あって一利なし」といった内容の話が出ます。
つまりバランス云々ではなくそもそも肉は避けなさいという主張です。そういう主張をする人々は、カール・ルイスは肉食をやめてから陸上競技の成績が上がった。ポール・マッカートニーもベジタリアンだのアインシュタイン博士もベジタリアンだ的な話をよくします。
実際、欧米には菜食主義者のアスリート、菜食主義者の映画俳優菜食主義者の科学者は多いですし、
アメリカ国民の少なくとも2000万人は菜食主義を標榜しています。
その反対に、「しっかり肉を食べよう」と主張する人もいます。そういう方々は、有名な医師のH先生は、ふだんからステーキを食べているから100歳になっても元気だった。
有名なコンサルタントのF先生も晩年になってもステーキを食べていた。
元メジャーリーガーのI選手は野菜を食べずに肉を食べていた。
登山家のMさんが高齢でもエベレストに登れたのは、日々の肉食のおかげだ。
といった話をしたりします。
また、
パレオフード=原始人が食べていたものこそ人間が本来食べるべきもの、
という考え方にもとづき、原始人は狩猟をしていたのだから肉は食べるべきものだ、
という主張もあり。
糖質制限を拡大解釈して肉食を礼賛する人もいます。
書店にいくと「肉を食べよう」的な本の隣に、「肉は食べるな」的な本が置いてあったりします。どっちなんだ!?!?と言いたくなりますね。
実際はどうかというと、専門家・権威者のあいだでも意見が分かれているというのがおそらく実情でしょう。政府の公式見解はどうかというと、
管理栄養士系の主張と同じで、「バランスよく食べよう」つまり肉もOKということになっています。
食事バランスガイドにも肉が載っています。管理栄養士は国家資格なので、国の主張と管理栄養士の主張が同じなのは当然なのですが。
さて、そういう状況ですので、「肉を食べるべきか」、「ベジタリアンになるべきか」を客観的に決めるのはとても難しいですね。しかもそこに、「魚はどうなのか」、「卵はどうなのか」、「乳製品はどうなのか」
が絡んでくると、話は一層、複雑になります。
したがって、「肉食と菜食、どちらが正しいのか」と聞かれたときには、
* 肉食を推奨する専門家もいる
* バランスを重視する専門家もいる
(日本政府はこの立場)
* 菜食を提唱する専門家もいる
ということを説明したうえで、「どれが正しいか分からないので、いつか将来、白黒がつく日までは自分で好きなほうを選んでください」
「正しい、正しくないで悩むより、食を楽しむことが大切」
という
「無責任な回答」をするのが今のところ。もっとも「客観的」でしかも「誠実」ですらあるのではないかと思っています。
この話をすると植物性料理研究家なのに菜食主義の味方をしないのか?と聞かれますが、植物性料理研究家は菜食好きですが菜食主義ではありません。
美味しい菜食料理が好きなだけです。これから菜食好きが増えるのは世の流れ。
食を提供する側も菜食好きが増えることを想定して料理の開発や食品の開発を進めることでしょう。
その結果
植物性のたべものがもっと美味しくなることを期待しています。