みなさん、こんにちは! 豆乳パティシエとして2006年から活動をしている、うのゆきこです。初コラム! 今回は、「アレルギーフリー」について書きたいと思います。
これまでの私自身の経験と感性で書くこともありますが、ご了承のほどお願いいたします。
何故って? それは、アレルギーには多種多様の考え方があるからです。
「アレルギーフリー」とはアレルゲンの食材を使用していない物を指します。すなわち、アレルギー物質を使わずに製品を作っているということです。「アレルギーフリー」とひとことで言っても、アレルゲンの種類や、アレルギー症状の重い軽いなど程度の問題があり、それらに対応してさまざまなものがあります。
平成21年の厚生労働省のレポートによりますと、日本の食物アレルギーの有病率は全年齢を通して1〜2%ぐらいだと推定されています。15歳以下においては10%程度と言われていました。
ところが、平成28年になると、全人口の約3人に1人が何らかのアレルギー疾患(喘息・花粉症・アトピー性皮膚炎・食物アレルギー)に罹患しているそうです。
ところで、みなさんはアレルギーをお持ちですか?
私の場合、食物アレルギーは多分…、卵とアーモンドがありそうです。多分…、小麦も…。それと、ロセフィンという薬にもアレルギーがあります。
多分…??っていう言葉に驚かれるかもしれません。私の場合は、軽度のアレルギーだからです。私は食の仕事に20年以上従事していますので、一般の方よりも食べる頻度が多いし、食材に触れること(粘膜や皮膚など)も多いです。だから卵アレルギーを持っていると思っています。
アレルギーにはいろいろなパターンがありますが、過剰に体内摂取することで起こっているのだと、私は感じています。私が卵にアレルギー症状を起こし始めたのは、いまから15年以上前のこと。まだ駆け出しのパティシエとして仕事をしていた頃、卵白を立てるお菓子の生地を作っている時に、最後に焼成しない生地(ナマ生地)を食べて確かめる作業をするのですが(プロはこれをするのですが、みなさんは食中毒の危険もあるので真似はしないでくださいね!)、食べたその時に、舌の先にビリッと激しい痺れを感じ、飲み込むと食道にも違和感を覚えたのが最初でした。
なんだろう? とは思いましたが、戦場のような職場で仕事をしていましたし、水を飲んだら時間経過と共に違和感が収まり、何もなかったかのように過ごせるようになったので、それからもそのまま過ごすようにしていました。
それ以来、ナマ生地を食べると同じ症状が出てきたので、ケーキを作る際に自分自身で人体実験をして(笑)、症状を分析して、
「この症状は卵白アレルギーだなっ」
とわかりました。
生の卵白にアレルギー症状が出ることがわかりましたが、私の場合、生の卵黄は食べられますし、火を通した卵白も大丈夫なんです。
その後、病院でアレルギー検査を受ける機会がありましたが数値には全く異常が出なかったのです。
主治医の先生は私にこう伝えてくれました。
- 数値が出ていなくても、症状があり反応があったら食べない。
- 数値が出ていても、食べて反応がなかったら食べても良い。
という考え方でした。
私もこの考え方で卵白のアレルギーに向き合っています。ただ、私の場合は生の卵白を食べなければ良いだけなんです。
食物アレルギーの発症を予防する方法は、発症する原因となる食品を回避する除去食が基本です。私のように軽度であれば、それも生製品を食べないという簡単なことだとわかりやすいのですが、火を通した食物でもアレルギー反応が出る方がほとんどだと思います。
アレルギーフリーのお菓子への挑戦は、あるお客様との出会いから
私が作るアレルギーフリーのお菓子が誕生したのも、24種類の食物アレルギーのある4歳の男の子との出会いがきっかけでした。
それは9年前の12月21日のこと。女性の方がむしやしないのお店に来られ、24種類の食物アレルギーのある甥っ子さんのためにクリスマスケーキをプレゼントしたいという注文をされました。
12月21日は、クリスマスの4日前。お店はクリスマスケーキづくりでごった返していました。どういうものが食べれないのか聞いていくと、小麦、乳製品、卵、大豆、米、落花生、そば、キウイなどなど…。お菓子の主原料はおろか、大豆まで使うことができないことに困惑しました。構想まで2時間くらいの余裕しかなく、初めてのことでもあったので、諸先輩方に電話して相談してみました。
「そんなケーキ…、忙しいのに断り!」
「そんなこと考える時間があったら普通のケーキたくさん作り!」
というご意見でした。それはそうですよね。当然のことを言っていただいていました。ですが、この時、
「今、私が断れば日本中のケーキ屋さんが断るっ!」と、
よく分からない発想が頭の中に飛んできたのです。食べられる材料を詳しくお聞きして、構想2時間でケーキを考え、なんとか、彼にクリスマスケーキを作ってあげることが出来ました。
ですが、みなさんが想像するようなケーキではなく、とうもろこしとでんぷん、水、植物油、りんごで作った、茶色いケーキでした。ですが、男の子は初めてのケーキだと喜んで食べてくれたそうです。
本当に良かった!
ですが、その後の男の子の事を考えました。4歳だと、おやつが食べたい年頃だろうなって。スーパーに行っても、80%以上の商品が加工品で、その加工品には、必ずと言っていいほど小麦や卵が入っている。
「この男の子のお母さんは、毎日毎日、365日ずっと、すべて手作りで食事を作っていらっしゃるんだ」
と、加工食品の大切さを改めて痛感しました。365日手抜きできない…。すべて自分で一から作ることの大変さには、頭が下がります。
大人は我慢ができても、子どもだから、これからどんどん知識がついて、いろんな物や事に触れ、食べられないものに触れた時、きっと悲しい思いをするだろうなと思っていました。
私自身の幼少期を思い出しても、お子様ランチや流行の料理やお菓子がテレビで流れていると、毎回のように母にせがんで「食べたいっ!」と言っていた事を思い出しました。このご縁を機に、その後も毎年クリスマスケーキなどを作るきっかけをいただいていました。
定番ショートケーキの「白いクリーム」をアレルギーフリーにするための挑戦
ある年のこと。男の子は少しずつ食物アレルギーが緩和してきていました。お米が食べられるようになった頃、男の子から、
「絵本に出てくる周りが白いクリームで苺が上にのったケーキが食べたい!」
とリクエストをもらう事に…!
「知ってしまったか!」
一瞬、私はそう思いました。それはそうですよね。日本のケーキ界のプリンセス「苺のショートケーキ」様を知るのは当然です。少しずつですが、私もアレルギーの勉強をして、アレルギー対応ケーキのことを身近に考え出した頃でした。
「どうすれば、白いクリームを作ることができるか?」
まだ、男の子は大豆のアレルギーがあり、豆乳を使えると簡単にできるのですが、男の子のアレルギーフリーで白いクリームを作ることはとても難しかったのです。ですが、試行錯誤の末、アレルギーフリーの白いクリームを作ることができました。植物性で、それも大豆なし。「まるでミラクルだわっ!」と思った私は、このアレルギーフリーのケーキの名前を、奇跡のケーキ「ミラクルケーキ」と名付けました。ですが、この時は、見た目だけのケーキでしかなかったのです。中のスポンジは、ふわふわではなくパサパサ。生地の色は茶色でした。「いつか!ふわふわの真っ白いスポンジにしたい!」それが、始まりでした。
フランス菓子の世界で、どんなに修行をして学んでも、ミラクルケーキの世界で、その考え方は全く通用しませんでした。
なぜか?
フランス菓子の基本は、小麦・卵・乳製品・砂糖の4種類の合成でできているからです。ミラクルケーキは小麦・卵・乳製品・砂糖の4種類のうち、3種類の原材料を使用していなません。使用しているのは砂糖のみ。甘味をなくすとケーキの定義が壊れてしまうからです。そして、作る過程においても、「卵の偉大さ」と「乳製品のクリーミング性」には頭が下がりました。お菓子には必要不可欠な素材で優秀なんです。ニワトリさんとウシさんに感謝しかありません。これらを無くしてケーキをつくる事で、本当のありがたみがわかりました。
その後、どうすれば卵のようなホイップ性と乳製品のクリーミング性を兼ね備えられるのか?ふわふわでクリーミィーで濃厚な味わいになるのか? それも、アレルギーフリーで作るためにどうすれば良いのか? 冒険が、始まりました。
これが今思う、ミラクルケーキの3年間の低迷時期でした。試作をしても試作をしても、失敗ばかり。次々と問題が起こり、試練ばかりの日々でした。考えを変え、やり方を変えても、毎年の年末には、反省をしていました。
「今年も自分の掲げるミラクルケーキができなかった…」
京都大学の友人からセルロースを使ってみたらとアドバイスをもらい使ってみたこともありました。ありとあらゆるアレルギー対応のケーキや食材を買いあさり、研究材料として食べてみましたが、私の理想に叶うケーキには出会うことができませんでした。
「私が想像するふわふわのスポンジケーキなんて作れないのかなあーっ」
と諦めてかけていた頃。ある日、厨房でケーキの仕込みのため、乾燥大豆をボールに入れて水を注いだ時…!!! 泡立つ気泡を見て、点と点が線になったのです。
「これだ!」
そう思って作ったのが、現在の「ミラクルケーキ」のスポンジでした。明らかにこれまでとは違う、ふわふわ感! 試作に試作を重ね、7年の試行錯誤の末にたどり着いたのです。
「これなら、自信を持って販売できる」
そうして全国配送をスタートさせました。今では北は北海道それも旭川から、南は西表島や宮古島にも冷凍配送しております。
アーモンドやくるみアレルギーの方でも食べられるよう、ナッツフリーを実現
最初はナッツも使用していたスポンジケーキですが、今では「ミラクル*ケーキホワイト」「ミラクル*ケーキいちご」は特定原材料7品目不使用でナッツフリーです。「ミラクル*ソイタルト」「ミラクル*ティラティス」は特定原材料7品目不使用です。
ナッツフリーに関しては、最近、アーモンドやくるみアレルギーの方がよく来店されます。「ミラクル*ケーキホワイト」「ミラクル*ケーキいちご」に使用しているミラクルスポンジは今ではナッツフリーになりましたが、アーモンドを抜くことがとても大変でした。洋菓子って、かなりナッツ類を使用するんです。ナッツ類を入れると食べた食感も歯切れも良くなりますし、なんともいえない芳醇な香りと風味がお菓子に閉じ込めることができます。タルトのクッキー生地やダマンドクリーム、フィナンシェやマドレーヌなど、香ばしい独特な風味を作り出しますし、旨味もあります。お菓子には切っても切れない素材なのです。
アレルギーフリーで除去、不使用のものばかりお話ししてきましたが、「食べられないものに目を向けても、明るく前向きには進まない」と思います。「食べられるものの中で、さらにおいしくなるように」私は今後も、「ミラクル*ケーキ」を通して、食に制限のある方々のために、新しい商品をどんどん開発していきたいと思っています。
「ミラクル*ケーキ」に興味をもっていただけた方は、こちらからオンラインで注文可能です。